Masuk* * *
ある晴れた朝、シルヴィアは、いつものように小さな庭を箒で掃いていた。 家族は帝都へ出かけ、自分は一人残されながら、箒の音が響くだけ。 今頃、煌びやかなドレスを着て、豪華な食事を楽しんでいることだろう。 (わたしには生涯、縁のない世界だわ……) そう思いながら、せっせと清掃を続けていると、突然、背後から何者かに布で口を覆われ、甘い香りを嗅がされた。 シルヴィアは訳がわからず、箒で必死に抵抗し、近所の気配にすがろうと手を伸ばす。 (いや、誰か助けて……!) 叫びは届かず、甘い香りで視界が歪む。 やがてバサッと箒が手から離れて地面に落ち、シルヴィアの意識は深い闇へと落ちていった。 その後、目が覚めると、シルヴィアはなぜか揺れる馬車の中にいた。 やがて馬車は止まり、窓から外を見る。目の前には壮麗で煌びやかな宮殿がそびえていた。 「目覚めたか。降りなさい」 隣に座っていたローブを羽織る男に促され、シルヴィアは馬車から自分の足で降り、訳の分からないまま歩かされ、宮殿の扉前に連れて行かれる。 そこには、深紫の長髪を真っ直ぐに切り揃えた厳格な雰囲気の青年が立ち、待っていた。 すると、その青年はシルヴィアを見るなり、驚く。 「お前、違うではないか!」 「てっきりこの娘が聖姫かと……」 自分はどうやら、リリアと間違われて人さらいに合い、連れてこられたらしい。 「連れてきたものは仕方ない。この娘を置いて、お前は下がれ」 ローブを羽織る男は青年の命令通り、この場からすぐ姿を消し、青年は一瞬、わざとらしくため息をつき、肩をすくめる。 「間違えられて可哀想に、なんとも不憫なことだ」 青年の声には同情が滲んでいるようで、どこか他人事のような冷たさがあった。 やがて、青年が名乗る。 「こちらの手違いで申し訳ありません。私はハドリー殿下の側近、リゼル・ヴィットであります」 彼の声は滑らかだが、どこか冷ややかな響きを帯びていた。 シルヴィアが不安に押しつぶされそうになりながら立ち尽くすと、リゼルは「おや」と小さく声を上げ、顔をじっと見つめてくる。 その視線はまるで値踏みするように鋭く、シルヴィアの心臓が跳ねる。 リゼルは片手で自分の顎を軽く掴み、薄い笑みを浮かべながら何やらぶつぶつと独り言を呟く。 自分は一体どうなるのだろう? シルヴィアが不安に思うと、リゼルは頷く。 「ふむ、これは化けるかもしれない……いや、しかし、これはこれで面白い展開だな」 その口調には、どこか芝居がかった軽薄さと、状況を楽しむような不気味さが混ざっていた。 シルヴィアが硬直する中、リゼルは一歩近づき、まるで秘密を共有するかのように声を低くした。 「時間がありませんので、単刀直入に申し上げます」 「花嫁の身代わりになれ、さもなくば、そなたは斬られる」 シルヴィアの息が詰まる。 リゼルは彼女の反応を観察するように目を細め、続ける。 リゼルの説明によれば、10年前の厄災では、現在の皇后が聖姫として戦ったことで皇国を救い、厄災から免れた。 だが、聖姫の力が衰えつつある今、皇太子ハドリーに聖姫の花嫁を迎えることが緊急の課題となり、急務でもあった。 更に、厄災まで日にちが迫って来ている為、聖姫の力を必要に迫られ、リリアの聖姫の評判に目を付けた皇室は、彼女を花嫁として迎えるべく何度も使者を送っていたが、父の曖昧な態度に業を煮やし、強行手段に出たのだという。 自分を身代わりとして嫁がせ、差し出すことは、やはり伝えられていなかったのね。 リゼルは同情するような目でシルヴィアを見たが、その口元には微かな嘲りが浮かんでいた。 「この後、殿下に会って頂きますが、人違いとわかれば、すぐさま、そなたは斬られて生きて帰れない。生き残る為には、身代わりの花嫁になるしかない」 シルヴィアが震える中、リゼルは彼女に顔を近づけ、囁くように言った。 「だから、どんなに辛かろうと殿下にこう懇願するんだ。『どうか私を花嫁にしてください』と。良いな?」 リゼルの言葉に、シルヴィアは逃げ場がないことを悟った。* * *幸せな婚礼の儀がつつがなく執り行われ、シルヴィアはハドリーに導かれるまま、宮殿のバルコニーへと移る。視界に飛び込んできたのは、夢の続きをそのまま色彩に写し取ったかのような、あまりに鮮やかな光景だった。傍らに立つ皇帝と皇后が、慈愛に満ちた眼差しをふたりへと注ぐ。「おめでとう、ハドリー。そしてシルヴィア、我が皇国へようこそ。……今日からそなたは、我の娘だ」重厚な皇帝の祝辞に続き、皇后もまた、春の陽だまりのような微笑みを浮かべた。「末永く、幸せにおなりなさい。あなた達は、この国の希望の光なのですから」ふたりが皇宮前広場を見下ろす手すり際へ歩み出ると、地鳴りのような大歓声が天を突いた。視界の限りを埋め尽くす民衆が、新しい皇太子夫妻を祝福し、熱狂の中で手を振っている。(ああ、皆が笑っている……)これ程までに、自分を祝福してくれている。かつての自分を拒絶し、蔑む者など、ここには誰一人としていないのだ。ただ、純粋な祝福の熱だけがそこにあった。胸の奥から熱いものがせり上がり、シルヴィアの両目から大粒の涙が溢れ出した。それは悲しみではなく、あまりに眩い幸福に触れたゆえの雫だった。その後、色とりどりの花々に彩られた、荘厳な大階段へと移動する。ハドリーが恭しく差し出した掌に、シルヴィアは震える指先をそっと重ねた。皇帝と皇后が静かに見守る中、ふたりはゆっくりと一段ずつ、未来を確かめるように降りていく。柔らかな光を吸い込んで煌めくドレスの裾が、波のように優雅に流れる。「シルヴィア様、本当におめでとうございます」「殿下、どうかお幸せに」「ルファル……。ゆめゆめ、その手を離すな」「シルヴィア……心から、おめでとう」階段の傍らから親愛に満ちた眼差しを向けるベル、リゼル、フェリクス、フィオン……そんな愛する者達の声に背を押されるようにして、ふたりは宮殿の外へと踏み出した。
秋の夜が、静かに明けた。運命の朝が、訪れた。リンテアル宮殿の礼拝堂。その後方にある重厚な双扉が、衛兵の手によって厳かに、左右同時へと押し開かれた。高く穿たれた大きな窓から差し込む秋の陽光は、まるで神の祝福がこぼれ落ちたかのように、聖域を神聖な輝きで満たしている。豪華な装飾が施された内装に、高らかに響き渡るパイプオルガンの音色。その旋律に導かれるように、聖なる純白のドレスに身を包んだシルヴィアと白の正礼装を纏ったハドリーが、光の中へと同時に足を一歩踏み出した。列席した招待客や貴族達が一斉に立ち上がり、どよめきにも似た感嘆の吐息が漏れる。本来、この皇国の習わしでは、新郎は祭壇で花嫁を待つものだ。けれどふたりは、対等な愛の証として、共に歩む道を選んだ。シルヴィアは中央の祭壇へと続く長い絨毯の道を見据え、一歩ずつ、ゆっくり進んでいく。その先に待つ、唯一無二の光――ハドリーに向かって。やがて、左肩にマントをかけ内側にタスキをかけた凛々しい立ち姿のハドリーが、視界に鮮明に映り込んだ。(やっと、お顔が見られた……)中央で歩みを止めた瞬間、ふたりの視線が深く絡み合う。ハドリーの端正な顔に、一瞬の驚きと、それを塗りつぶす程の深い慈しみが滲んだ。「……やっと会えた。綺麗だ、シルヴィア」「……殿下……っ」差し出されたハドリーの大きな掌。シルヴィアは込み上げる熱いものを懸命に堪え、震える指先をそっと重ねた。(……温かい)手袋越しにも伝わるハドリーの温もりが、胸の奥に澱(よど)んでいた不安を優しく溶かし、凪のような安らぎを運んでくる。腕を組むよりも密やかに、添えられた指先から伝わるのは、何よりも強固な絆だった。導くような、包み込むようなエスコート。凛とした姿勢でシルヴィアが歩む度、柔らかなピンクの長髪が流れ、聖姫の力に呼応するかのように、レースのロングベールが光を弾いて優雅な軌跡を描き、リボンの下に何
* * * その夜、祝宴の喧騒を逃れ、シルヴィアはハドリーに導かれるようにして、月明かりが降り注ぐバルコニーへと抜け出した。 先程まで、華やかな光に満ちた広間でハドリーとダンスを披露した余韻が、熱が、未だに冷めず残っている。 「ようやく、ふたりきりになれたな」 夜風で僅かに翻るルファルの貴族衣装。月下に佇むその姿は、一幅の絵画のごとくあまりに美しく、シルヴィアは跳ねる鼓動を抑えることが出来ない。 それに傍らに立つルファルは先程までとはどこか違う気がした。 しばしの静寂に包まれた後、ルファルが決意を固めたかのように静かに口を開く。 「魔形の分身が帝都へ放たれたあの日、私は初めて己の動揺を知った。……そして、気付かされた。お前がもはや単なる『偽の花嫁』などではなく、私にとって代えがたい存在なのだと」 ハドリーは、逸らすことの出来ない真剣な眼差しでシルヴィアを見つめる。 「シルヴィア。世界の誰よりも、お前を愛している。……私の、真(まこと)の花嫁になってくれないか」 不意に溢れた愛の言葉と、あまりに切実な求婚。 視界が急激に潤み、熱いものが胸の奥からせり上がってくる。声を出そうとしても、零れるのは涙ばかりで言葉にならない。 けれど、この想いに応えたい一心で、シルヴィアはしがみつくようにハドリーを抱き締めた。 「はい……。私も、愛しております……殿下」 震える声で、けれど確かな意志を込めて応える。 するとそれを聞いたハドリーの腕に、いっそう強く抱き締められる。 まるで二度と離さぬと月に誓うかのように。 バルコニーに降り注ぐ月の光がふたりを優しく照らし出す。 夏の夜の、頬を撫でるような柔らかな風が、シルヴィアの髪飾りとハドリーの髪を結んだシルクのリボンを密やかに揺らしていた。 * * * そして、季節が移り変わり、秋。 婚礼の準備と聖姫や公爵令嬢としての教育に追われ、慌ただしい日々が過ぎていく。 最後にゆっくりと言葉を交わしたのは、あのプロポーズの夜のことだっただろうか。 シルヴィアがふと視線を向けた窓の外では、秋の澄み渡る月が、夜空を青白く、
* * *邸宅に戻った夜、食事室には思い出の料理が並んだ。無事の帰還を喜ぶ護衛と使用人全員に温かく迎えられた後に心を込めて作った、かつて、ハドリーが初めて口にし、出立前にも食べた、あのチーズと共にパンと玉ねぎと鶏肉を焼いたものの上に薬草の花を散りばめた特別なシルヴィアの手料理。シルヴィアはハドリーと共にそれを食べる。「――美味しい。今宵の味はあの時よりもずっと温かく感じる。……約束、守れたな」低く、慈しみに満ちたハドリーの言葉が、そっとシルヴィアの心に触れる。すると、堰を切ったように瞳から大粒の涙が溢れ出した。「シルヴィア?」「取り乱してしまい、申し訳ありません……。ほっとして、嬉しくて涙がつい……」「……泣きたいだけ泣けばいい」ハドリーの深くて穏やかな、けれど決して揺るぎない眼差しがじっとシルヴィアを見つめる。「シルヴィア、お前がいてくれたからこそ、私は帰るべき場所を見失わずに済んだのだから。……もう、何処へも行きはしない。これからは、ずっとお前の傍にいよう」ハドリーの大きな手が、シルヴィアの頭を優しく包み込んだ。* * *3日という月日が瞬く間に流れ、陽光が穏やかに降り注ぐ午後のこと。皇帝の間では荘厳な静寂の中、ハドリーの受勲式、そしてシルヴィアの聖姫認定と令嬢式の儀が執り行われた。列席した皇后や公爵、伯爵といった貴顕(きけん)の方々の見守る視線が中央へと注がれる。豪奢な正装に身を包んだハドリーが恭しく頭を垂れると、皇帝の手から、眩い光を放つ黄金の大勲章がその胸元へと授けられた。続いて、フェリクス、フィオン、リゼルの3名も次々に進み出る。彼らの功績を称えるべく、銀の大勲章、騎士の称号、国に貢献した証の銅の勲章を順に下賜(かし)され、その他の騎士達も表彰され、広間には厳かな拍手の音が波紋のように広がっていった。その後、吐息ひとつ分の空白を経て、場が更なる緊張感に包まれる。凛
* * * そうしてひとしきりハドリーと抱擁を交わした後。 目覚めたベルに抱きすくめられると、シルヴィアの強張っていた肩からようやく、はらりと力が抜ける。 「シルヴィア様……! ご無事で、本当に良かった……っ」 傍らではすでに意識が戻ったリゼルやフィオン、フェリクス、そして副騎士長と生き残った騎士達が安堵の溜息をついている。 「おふたりであの魔形を……」 「シルヴィア、聖姫になれたんだね。とても綺麗だ」 リゼルとフィオンが感嘆な声を零す中、フェリクスも静かに口を開く。 「ハドリー。……お前がいてくれて良かった」 「宮殿に向かうぞ」 副騎士長の号令に、生き残った騎士達が慌ただしく帰り支度を始め、ハドリーは自分の馬をリゼルに託し、シルヴィアの馬車へと乗り込む。 やがて、揺れる馬車の中、ハドリーの横顔を見つめる内に、シルヴィアの視界は次第に霞んでいく。 心地良い揺れに身を委ねるうちに、吸い込まれるような深い微睡みがシルヴィアを優しく包み込んだ。 * * * 宮殿に辿り着いたのはその、2日目の夕暮れ時だった。 黄金色の残光が回廊を照らす中、軍の家族や宮殿に仕える者 等が列をなし、音もなく深々と頭を下げる。 そんな静かな歓迎を受け、シルヴィアはハドリーと共に宮殿入りをし、皇帝の間へと向かった。 玉座につく皇帝とその隣に座る皇后の階段の前に、ハドリーが騎士の礼を取り、リリシアも同じく跪く。 「ハドリー・リンテアル、只今帰還致しました。当最終部隊、並びに聖姫の御力を似て、国境のゲートは無事に閉じられ、厄災の刻は収まりました。……フェリクスの部隊はほぼ壊滅、多大なる犠牲を払う結果となりましたが」 「そうか」 ハドリーの報告に皇帝は深く頷く。 「よくやった、ハドリー。お前に皇国の行く末を託した私の目に狂いはなかった」 「……勿体なきお言葉にございます」 「先のことは知れぬが、これでしばし、この皇国も安泰であろう」 皇帝の低く、重みのある声に続き、皇后が柔らかな笑みを浮かべ、シルヴィアを見つめた。 「シルヴィア、貴女もよく務
* * *月が――――。互いにそう思った直後だった。ハドリーの目の前で、シルヴィアの包み纏っていたドレスが音を立てて引き裂かれ、彼女の身体は凄まじい光の炎に呑み込まれた。「……っ!」抱き起こされていた温もりが、唐突に消える。シルヴィアの手も彼女の頬に触れていた手のひらの指先も無慈悲に引き剥がされた。ハドリーの身体は、力なく地面へと崩れ落ちる。――ハドリーよ、月には気をつけよ。シルヴィアの命が危うい。彼女を傍に置くと決めて数日。皇帝に急ぎ呼び出され、告げられたあの不吉な言葉が今、鮮明に脳裏をよぎる。シルヴィアが、死んだ……?絶望という名の暗い淵に沈みかけた、その時だった。「あ……、……う……」光り輝く炎の向こうから、消え入りそうな、けれど確かなシルヴィアの声が聞こえた。(シルヴィアは、まだ、生きている)ならば、私だけがここで終わる訳にはいかない。「シル、ヴィア……っ」ハドリーは身を焼くような光を厭わず、最後の一滴まで力を振り絞って立ち上がった。そして、荒れ狂う光の炎ごと、愛しい彼女を強く抱き締める。「まだ、死なれては困る。……お前は、正真正銘、私の花嫁となるのだから」* * *意識が遠のく苦しみの中で、シルヴィアはふと、ハドリーの自分を呼ぶ声と温もりを感じる。(殿……下……?)混濁する意識の底から、記憶の糸が手繰り寄せられる。――そうだ。期限の2日前。父が亡き母と共に、月の下で「聖姫」の力を封印したのだと、ハドリーから聞かされていた。だから、月明かりの日に聖姫の力が封印されたのであるならば、このまま月明かりを全身に浴びることで覚醒出来るかもしれない。シルヴィアは光の炎に身を焦がしながら、天に浮かぶ
シルヴィアは今にも泣き出しそうになる。 期限の2日前は最後の朝餐だと思ったけれど、違った。 でも、今宵はほんとうに最後の――――。 「最後の晩餐だ、とでも思ったか?」 「え、いえ、あの……」 「らしくないことを言ったが、最後ではない」 ハドリーの言葉に力強さを感じた。 そうだ。ハドリーは必ず生きて帰るお人。 「殿下、戻られたらまた一緒に食べて頂けますか?」 「ああ、約束しよう」 シルヴィアはハドリーに優しく微笑んだ。 * * * 翌日の早朝。シル
* * *それからシルヴィアは宮殿へ騎乗したハドリーとリゼルと共に馬車で移動し、皇帝の間に足を踏み入れた。先を歩くハドリーに続いて玉座まで近づいていき、順に跪く。皇帝の隣に座る皇后は神聖なる姫そのもののお姿だった。「急に呼び出してすまぬの。妻がどうしてもシルヴィアに会いたいと効かないものでな」「陛下、このような場で妻呼びはお控なさって」「それでご用件は? 忙しいゆえ、手短に願いたい」ハドリーの言葉はいつにもまして刺のよう。(ここに来る前から殿下は嫌がられていたし、皇后様とは不仲みたい&hell
* * *やがて、シルヴィアとハドリーを乗せた馬車が動き出す。リゼルとベルに守られながら、ハドリーが無事に戻られるよう心の中で祈っていたが、一体何があったのだろう。(リゼル様とベルは馬車から降りた時、殿下と何かを話していたようだけれど……)「あの、で、殿下……」「そんな顔をするな。何者かに付けられていたようだが、私が対処した。心配するようなことは何もない」「わ、分かりました……」魔形ではなかったらしい。それでも、民が不安が
「……あ、その、申し訳ありません! 足を止めて余計な事を……」「…………」「で、殿下?」ハドリーはハッと我に返る。(私としたことが。何をぼうっとしている)「いや、いい。これから、聖姫の力と関わりのある花が咲いている花畑に向かう。着いて来い」ハドリーは一歩踏み出し、シルヴィアを促した。* * *やがて、シルヴィアはハドリーと共に花畑に辿り着く。そこは一面に広がる色とりどりの







